Manufacturing Process
扇子ができるまで
京扇子は分業で作られており、工程ごとの職人が技術のバトンを繋ぎ完成します。どれも地味な作業で、派手さはありませんが、使う人のことを一心に考え、職人が細やかな作業を行います。そんな職人の心が、「永く愛される扇子」を支えています。ここでは、80ある工程を大きく5つ分けてご紹介いたします。
01骨作り
幸尚堂は、滋賀県産の上質な扇骨にこだわっています。扇骨に使用する竹は、表面付近のほんの一部分のみ。それをさらに削り、何度も磨きをかけていきます。そうして、よくしなり手になじむ扇骨が出来上がります。
02紙加工
強度に富む和紙は、幸尚堂の京扇子づくりに欠かせません。使用するのは、京都の地紙屋で加工された3層構造の特殊な和紙。これによって、繰り返しお使いいただいても型崩れせず、壊れにくい扇子になります。
03上絵
扇面を彩る、そのために
手描きや型刷り、箔押しなどで扇面を一枚ずつ彩ります。扇面に絵を描く時には、後の工程(折り・つけ)を常に意識しています。特に、この次に控える折り工程は、絵の滲みが出やすいです。それを防ぐため、加飾師が絵の具と膠(にかわ)のバランスを調整して絵を描きます。この時の配合は非常に重要です。
制約の中で生まれる立体感
扇面はアール型で折りも加わるため、それに合わせた絵の配置をします。彩色時に絵の具が厚すぎると、折った時に絵が割れてしまいますので、濃淡や線のメリハリを意識して絵を描き込みます。
上絵は平面への彩色ですが、後に扇子となり立体的な絵になることが醍醐味です。
04折り加工
折る前に、入念な下準備
和紙は繊維の方向が均一ではないため曲がりにくく、そのままだと綺麗に折れません。そのため、紙を湿らせ柔らかくしてから折ります。最適な湿り具合は、天候や季節などによって微妙に変わるもの。今まで培った経験でそれを見極め、専用の道具で折りをつけ、その後中骨を通す穴をあけます。こうして、なめらかで手触りのいい折り地が生まれます。
永くお使いいただくために
折った後も、紙はもとの形に戻ろうとします。それを安定させるために、一度折り地をこなし、専用の道具で挟み圧力をかけます。使っても型崩れしにくく、閉じたときも美しい。そんな京扇子の佇まいを生み出すために、この工程は欠かせません。
05つけ(仕上げ)加工
素早く、正確に
中骨に糊をつけ、折り地に差し込みます。多いときは60本近くある中骨を正しい位置に差し込むため、手早さと繊細さが求められます。差し込んだ後、木で打って形を整え、専用の道具で挟んで落ち着かせます。
扇子が仰ぐといい香りがする、というお声をよくいただきます。それは、この工程の下準備で中骨に香水を染み込ませるためです。
美しく、整える
親骨に熱を加え、内側から曲げます。この工程を、矯め(ため)と呼びます。扇子を閉じたとき、パチンと音が鳴るのはこの工程によるものです。
曲げた扇骨を一晩かけて落ち着かせ、親骨を切り揃えてから折り地とくっつけたら完成です。